【終活】おひとり様が安心して旅立つために——終活で押さえておきたい3 つの備え
【おひとり様の終活】
近年、独身や離別・死別によって単身で暮らす「おひとり様」の高齢者が急増しています。家族に頼らずに老後を過ごす人々が多くなる中、「自分が亡くなった後、財産や手続きはどうなるのか」といった不安を抱える人も少なくありません。人生の最期を穏やかに、そして自分らしく迎えるためには、事前の準備——すなわち“終活”が大切です。今回は、おひとり様が備えておくべき3 つの重要なポイントをまとめてご紹介いたします。
【「死後事務委任契約」で葬儀や手続きを信頼できる他人に託すという選択肢】
おひとり様にとって、自分が亡くなった後に誰が葬儀を手配し、どのように役所や施設との手続きを進めてくれるのかは大きな課題です。こうした不安を解消してくれるのが、「死後事務委任契約」という制度です。この契約では、死亡届の提出、健康保険や年金の停止、入院費や施設費の精算、住居の明け渡し、遺品の整理、葬儀や納骨の手配など、死後に必要となる一連の実務を、あらかじめ信頼できる第三者(友人、行政書士、NPO 法人など)に委任しておくことができます。この契約の特徴は、生前には効力が発生せず、本人の死後にのみ効力を持つという点です。遺言と異なり、相続財産の分配ではなく「実務の執行」を目的とした契約です。近年では、行政書士や高齢者支援のNPO 法人がこうしたサービスを提供しており、家族に頼らずとも最期まで自分の意志を尊重できる社会的仕組みが整いつつあります。「迷惑をかけたくない」「自分の死後もきちんと整理しておきたい」と考える方にとって、非常に心強い制度です。
【遺言書の作成が「国庫帰属」を防ぐ重要な備えに】
もう一つ大きなテーマが、死後に残る「財産の行き先」です。法定相続人がいない場合、財産は最終的に国庫に帰属してしまいます。これを防ぐために有効なのが、遺言書の作成です。遺言書を残しておけば、信頼できる友人や恩人、社会貢献団体などに遺産を遺贈することも可能になります。特に「おひとり様」にとっては、自分の意思を明確に伝えるための遺言が不可欠です。なかでもおすすめなのが「公正証書遺言」です。これは公証人が作成し、原本が公証役場に保管されるため、偽造や紛失のリスクがなく、家庭裁判所の検認も不要です。また、遺言書の中に**「遺言執行者」**を指定しておけば、遺言内容に従って財産を適切に処理してもらえるため、トラブルの回避にもつながります。
家族がいない、あるいは財産の分配に悩む方こそ、早めの遺言作成が安心をもたらしてくれるでしょう。
【増加する「相続登記未了」の土地問題と、おひとり様に求められる法的備え】
もうひとつ、社会的に深刻な問題となっているのが、「相続登記未了」による所有者不明土地の増加です。相続が発生しても、相続人が登記を行わずに放置された結果、誰がその土地や家を所有しているのか分からなくなる事例が全国的に増えています。特に地方の空き家や山林などでは、固定資産税の請求先すら不明となり、自治体による管理や活用も困難になるケースが相次いでいます。この問題に対応するため、2024 年からは相続登記が義務化されました。これにより、相続が発生した場合には3 年以内に登記を行わなければ過料が科される制度が始まっています。おひとり様にとっても、これは他人事ではありません。自分の死後に不動産が放置されてしまうと、相続人や地域社会に混乱や負担をもたらすことになります。そのためにも、遺言書で相続人を明確にし、不動産の処理方法をあらかじめ定めておくことが非常に重要です。
また、登記や相続の専門家と早い段階から相談しておくことで、死後の手続きが円滑に進むように整えておくことができます。
【おわりに:人生の最期に「安心」と「尊厳」を残すために】
人生の終盤に向けて、自分らしく、そして周囲に迷惑をかけずに旅立ちたいと願うおひとり様にとって、死後事務委任契約・遺言書の作成・相続登記の備えは三本柱とも言えるべき重要なテーマです。「財産は少ないから大丈夫」と思わず、「誰がどう手続きをするのか」「自分の思いをどう託すか」を具体的に形にしておくことが、安心と尊厳ある人生の締めくくりにつながります。高齢社会を迎えた今、「おひとり様の終活」はもはや特別なことではなく、誰にとっても必要な備えです。できるだけ早い段階で、信頼できる専門家や支援団体に相談し、自分に合った終活のかたちを見つけていくことをおすすめします。